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2000年3月5日版

スタイルシート論争

私自身が、スタイルシート に対してあまり好意的な記述をしていないので、スタイルシート擁護派の方から、たまにお叱りのメールをいただいたり、「ラウンジ」で喧嘩が始まったりすることがあります。

「HTMLで見栄えを記述すべきじゃない!!」、「全員スタイルシートに移行すべきだ!!」、「古いブラウザは捨て去るべきだ!!」などが、彼らの言い分の例なのですが・・・

私個人の意見

私自身の答えとしては、使う、使わないも個人の自由。新しい技術を優先したいなら使うし、古いブラウザでも同じように見えることを優先したいなら使わないし、そこは個人の自由だと思っています。

W3Cの信者達

ところが、W3C信者の方々は布教活動に熱心な方が多く、他人が、W3Cの教えを受け入れないことに苛立ちを感じ、自分の信ずるものを他の人にも押し付けようという行動がたまに見うけられるように感じます。

99%の人が共有する価値観であれば、それに従うことも社会的モラルと言えますが、現状バラバラな価値観の状態なのに、自分の価値観を人に押し付けようとするため、「宗教的」「布教活動」といった、ちょっと、不適切かもしれない言葉で表現させていただきました。

すべての人がスタイルシートに移行すべきか?
〜 放送はぜんぶワイドテレビに!? 〜

W3C擁護派の人達の中には、「すべての人が即座にスタイルシートに移行すべきで、それをしないのは怠慢であり、W3Cに対する冒涜だ」のように感じている人がいるようです。

「いつまでも、古いブラウザのことを気にしているから、ブラウザをアップデートしない人が増えて、W3C様の教えが具現化できないじゃないか!」という意見もわかるのですが・・・

ワイドテレビの規格ができたんだから、すべての放送局はワイド放送以外流すべきではない。すべての人は古いTVを買い代えるべきで、古いTVを持っている人なんか無視するべきだ!! なんて変ですよね。

TVの買い替えは金がかかるが、ブラウザは無料だとは言っても、付録CDを得るには雑誌代だってかかるし、バージョンアップの仕方なんて知らないおじいちゃん、おばあちゃんだっているし、バージョンアップするには、PCをスペックアップする必要のある人もいるし・・・

古いブラウザを考慮すべきか、見捨てるべきか?

W3C擁護派の方から、「いつまでも古いブラウザへの考慮を続けているから、W3Cや私の望む世界が具現化できないのだ!!」という趣旨の意見もいただきました。

HTMLはもはやSGMLではない

SGMLは、論文や仕様書やマニュアルのような「情報」を理路整然と記述することを目的として考案されたものです。初期のHTMLも同じ目的で開発されましたが、現在のHTMLは「情報」だけでなく、「見栄え」「インパクト」などいろいろなものを伝えるものとして利用されています。

また、SGMLを利用するのは技術者に限られているのに対し、HTMLは、小学生も、おじいちゃんも、おばあちゃんも、近所のおばさんも使います。

利用目的や利用者が異なるものを、無理矢理同じ技術や思想で縛ろうとしているところに、W3Cの無理があるのではないでしょうか。

利用者が仕様を守る精神も必要ですが、利用者が守ることができる仕様を作る精神も必要だと思います。HTMLはもっと文法をルーズなものにして、初心者でも記述しやすいようにしてほしいものです。

HTML4.0やCSSは「標準」ではない

HTML4.0やスタイルシート(CSS)は「標準」なんだから従うべきという意見がありますが、嘘です。HTML4.0、CSS1、CSS2 は「標準(Standard)」ではなく、「勧告(Recommendation)」です。Recommendationは「推奨」とも訳されます。

インターネット上の標準は通常IETFという機関で、最低2つ以上の実装例があり、互換性が保たれているか、仕様書の記述にあいまいな個所がないか、現状からの移行に問題は発生しないかなど、十分な審議をもって可決されます。

ところが、W3Cはこうした手順を十分にふまないまま「勧告」として公開してしまいした。逆に言うと、そういう手順をふまえずに発表しているから「標準」とは言わず、「勧告・推奨」としているのかもしれません。

マスコミも「勧告」と「標準」の違いも認識しないまま、HTML4.0を新しい「標準仕様」として宣伝しました。ただでさえ、Microsoft社のブラウザ無料攻撃にあって資金的にも苦しかったNetscape社が中途半端な対応版を出荷せざるを得なかった原因もそこらへんにあると思っています。

バグだらけのNetscape Communicator 4.0はNetscape社の怠慢か?

NC4.0のCSS1実装がバグだらけで使い物にならないのは事実です。しかし、これは、Netscape社の怠慢だったのでしょうか?

私自身ソフトウェア会社に勤務しています。会社の利益、自分の給料、妻子のことを考えなければなりません。Internet Explorer と Netscape Navigator の戦争が激化し、バージョンアップ版の出荷を競い合っている最中、Microsoft社の資金力に Netscape社があえいでいる最中にあんな仕様を発表すれば、こうなることは予測できたのではないでしょうか。

もちろん、バグだらけのソフトを出荷したNetscape社に非が無い訳ではありません。でも、仕様を発表さえすれば、それを実装できるかできないかは、実装会社まかせというW3Cの行動にも非があったのではないでしょうか。

アクセシビリティについて

アクセシビリティは、「HTMLで見栄えを記述していない」ではなく、「見栄えの記述を無視しても理解できる」ことを観点にガイドやチェックリストを設け、その網羅度によってJISマークのようなマークをつけるようにして欲しいです。

  <META NAME="Accessibility" CONTENT="Level1">

街の中のすべてのポスターを点字にする必要はありません。ポスターや絵画があってもいいし、点字図書館があってもいいし、それらをふまえた上で、点字図書館の蔵書が増えればいいな・・・と思っています。

「とほほのWWW入門」の発言力

W3C擁護派の方から、「ホームページ作成界におけるわたし(とほほ)の発言力は大きいので、個人的な意見(W3Cを非難する記述)は自重すべきだ」という意見をこれまでに2〜3度いただきました。


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